ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 アリアの目が大きく揺れる。

「君はどっちを取る?何度もループして仕えてきたクラヴィス嬢?それとも、愛しのグレイヴナー閣下?」

 すっと伸ばされた指が、銀の髪飾りを掠めるようになぞった。

(……そんなの選べるわけがない…)

 二人とも大切な人だ。エレナも、セドリックも、どちらも失いたくはない。
 心臓が激しく脈打ち、足元が崩れ落ちそうだった。

 そのとき、廊下の奥からコツコツと足音が響いてきた。
 誰かがこの倉庫へと近づいてくる。

「じゃあ、明日の審問会……楽しみにしてるから」

 ユーリはちらりと肩越しに視線をやり、再びアリアへと微笑んだ。

「アリア!よかった、全然戻ってこないから探してたんだよ!」

 慌ただしい声に振り返ると、ロレッタが心配そうに駆け寄ってきていた。

「どうしてここが…」

「ライナスさんの従者の人が、伝言を伝えに来てくれたの」

 小走りで近づいてきた彼女は、アリアの顔を見てほんの少し眉をひそめたが、詮索するようなことは言わなかった。
 ただ優しく「お疲れさま」と言って、そっと隣りに並んでくれる。

「ちょうど見張りの交代時間みたいで監視の目が緩いから、今のうちに戻ろう?」

「……うん」

 かろうじて笑顔を作りながら、アリアは答える。

 振り返ると、ユーリの姿は闇に溶けるように消えていた。



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