ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 公爵令嬢の支度を手伝っているときに、誤って毒針に刺さったのだろうか。だとしたら気の毒なことだと少しだけ同情を寄せる。

「そのメイドは死んだのか?」

「いえ、ピンピンしておりますが」

 即答で返ってきたライナスの言葉に、セドリックはわずかに目を見開いた。

(毒針に気づき、無傷で…?)

「あぁ、ちょうどあそこにいますね」

 窓の外にライナスが目線を送る。
 セドリックもそれにならって、椅子に座ったまま視線だけを外へと滑らせた。

 中庭の一角。
 窓から見下ろす視界の端で、ティーテーブルの後片付けをしているメイドが一人。

 小柄で焦茶色の髪を一つにまとめたその姿は、特別目立つわけでもない。
 どこにでもいる普通の若いメイド。

 そこへ別のメイドが近づき、ぽんとその肩を叩く。彼女は驚いたように手を止めてから、ぱっと笑顔を浮かべて振り返った。

 ライナスの言うように、あの様子だと毒針で倒れたようには見えない。
 だからこそ、気にかかる。

「名前は?」

「確か…アリア・セルフィア。今日付でクラヴィス嬢の部屋付きに任命されたそうです」

 セドリックはおもむろに椅子から立ち上がった。

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