ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?

32.審問会

 * * *

 閉ざされた重い扉が開かれ、アリアは思わず背筋を伸ばした。

 ここは王城の一角、石造りの大広間。
 天井から垂れ下がる王国の紋章旗が、等間隔に並ぶ燭台に灯された炎が揺らめく。

 すでに多くの高位貴族や文官ら陪席者で埋まっている。
 ざわめきの中、視線はただ一人――被告席に座るエレナ・クラヴィス嬢に向けられていた。
  王太子との婚約者でありながらこの数日厳しい監視下に置かれ、今も不躾な視線に晒されている。そばに寄り添えないことが、アリアはどうしようもなく歯がゆかった。

 そして正面の長机の後ろに座るのは、漆黒の外套を纏った審問官たち。
 この審問会は王宮監察局が取り仕切ると聞いていたが、その雰囲気は想像以上に重苦しい雰囲気に包まれている。

 やがて、静寂の中を重厚な足音とともに、国王陛下とミカエル王太子殿下が入場した。

 会場のすべての視線が二人に集中する中、国王陛下は厳かに裁定の玉座へと歩みを進めた。その玉座は、正面の審問席よりも一段高く、すべての者を見下ろす位置にある。

「国王陛下の御前において、この場は王権の代行として国家と王室への裏切りを断罪する。いかなる者も虚偽を述べ、この法の場を乱すことは許されぬ」

 監察局長が厳かに宣言した、次の瞬間。
 一人の監察官が慌ただしく駆け寄り、局長の耳元で何事かを囁いた。

「……なんだと?」

 局長の表情が、ほんの一瞬だけ険しくなる。

「ただいま報告があった。第一宰相セドリック・グレイヴナーは、今朝方まで拘束されていた地下牢より姿を消したと」

 会場にいた人々のざわめきで、場が大きく揺れた。

(――セドリック様が、逃げた?)

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