ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 証人席に控えていたアリアの心臓も、大きく跳ねる。

「皆様ご静粛に。近衛隊がただいま全力で捜索にあたっております。また、審問会の直前に逃走したということはやましいことがある証拠。すなわち罪を認めたも同然であります」

 それは違う。
 あの人はいつだって冷静で、状況を見極めて数歩先を動く人だ。

 何も考えず逃げるなんて絶対にしない。
 必ず何か理由があるはず――不安と信頼がせめぎ合い、胸の奥がざわめく。

 監察局長は、あくまで動揺を見せずに進行を続けた。

「これより、王宮審問会を開廷する」

 低い鐘の音が三度、重々しく広間に響きわたる。
 石造りの天井が共鳴し、場内のざわめきはすっと静まり返った。

「本日の審問は――クラヴィス公爵家の令嬢、エレナ・クラヴィス。そして、逃亡した第一宰相セドリック・グレイヴナー。両名にかけられた偽造通貨製造と国家転覆の罪についてである」

 罪状が次々と読み上げられる。
 クラヴィス嬢――エレナ・クラヴィス。国家反逆の嫌疑。
 そして第一宰相セドリック・グレイヴナー。国の根幹を揺るがす不正調査。

 どれも根拠に乏しいはずの罪が、まるで最初から決まっていたかの並べ立てられていく。
 すでに昨日までに予備審問は終了していて、クラヴィス家やセドリックにとって不利な証拠が提示されている。それを覆すのは容易ではないことは、アリアにも想像がついた。

(……ユーリの描いた筋書き通りになってる)

 アリアはふと、傍聴席の一番後ろに目を向ける。
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