ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 * * *


 翌日からは、アリアは初日の失態を挽回すべく宰相執務室を時間ぴったりに訪れていた。

 そして一週間が経った。
 相変わらずフラグ回収に奔走する傍ら、推しカプの日次報告にも慣れ始めたころ。

「失礼します、本日の報告にまいりました!」

「今日も時間通りだな」

 アリアは執務室の扉を開くと、書類に目を通していたセドリックがわずかに目線を上げた。
 すっかり定位置になった一人がけの椅子へと腰を下ろすと、奥の扉が静かに開いて秘書官のライナスがティーセットを運んできた。

「どうぞ。本日は北部地方で採れた貴重なファーストフラッシュです」

 無駄のない所作で紅茶が注がれたあと、目の前にデザート皿が置かれる。
 最近はクッキーやブラウニー、パウンドケーキなどのスイーツも出してくれて、もうどこのカフェですか?状態だったのだが。

「えっ、 これってもしかして!?」

 アリアの目は、お皿の上のモンブランに釘付けになる。ただのモンブランじゃない。王都どころか王国中の女性たちが憧れるパティスリー、リュミエールの限定メニューだ。

(確か、予約すら数ヵ月待ちの幻のスイーツのはず…!!)

 驚くアリアを楽しげに見ながら、セドリックは紅茶をすする。

「……で、今日はどんな進捗があった?」

「あ、はいっ!」

 一転、目がきらりと輝く。

「本日のお二人はですね、午前中に書庫で偶然お会いになったんですが、殿下が『先日のお茶の時間が楽しかった』っておっしゃって!エレナ様が『じゃあ今日もご一緒しませんか?』って微笑みながら誘われまして!」

「それは良い兆しだな」

「ですよね!?しかもそのときの殿下の眼差しが、もうエレナ様にめろめろって感じでして!!」

「ほう、めろめろか」

 セドリックは黙って頷いていたが、ふと手を止めて柔らかく促す。

「それで、そのあとは?」

「はいっそれからですね……!」

 次第に語るスピードが上がっていくのを、セドリックは呆れる様子も見せずに何度も「それで?」と続きを促す。
 アリアの手の動きや表情も自然と大きくなり、ついには「尊い……!」と何度も呟きながら推しカプ――王太子殿下とエレナ嬢――の尊い一幕を熱量たっぷりに語りつくしたのだった。


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