ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 * * *


 (今日は一日平和だったしお二人の尊い姿も見られたし、推し語りもできて最高のケーキも食べられて……うん、いい日だった!)

 意外と宰相閣下って聞き上手なのかもしれない。

 報告を終えたアリアはそんなことを思いながら、あれほど抵抗のあった日次報告を受け入れつつあった。それがセドリックの思惑通りとも知らずに。

「アリアいた〜〜〜!!」

「わっわわっ!?」

 曲がり角の向こうから飛び出してきたのは、アリアの先輩メイドにして情報通の筆頭、ロレッタだった。

「お疲れ〜って言おうと思ったのに、何その満面の笑み。何かいいことあったでしょ?」

「えっ!?べ、別に!?」

 その動揺っぷりが逆に怪しさが倍増することを、この猪突猛進な同僚は気づいていない。相変わらずだわ、とロレッタは内心苦笑する。

「まぁいいけど。ところで、宰相執務室に毎日顔出してるって聞いたけど何やらかしたの?」

「何もやらかしてないから!国家の安定のための日次報告を…っ」

「国家の安定のためにモンブラン食べるの?」

「ななな、なんでそれ知って……!!」

「だって口の端にクリームついてるし」

「嘘…!?」

 アリアは顔を真っ赤にしながら慌てて口元をぬぐう。

「これは…っ、私が甘いもの好きだろうからって出してもらっただけで」

「出してくれたって宰相様が?」

「うん…」

「高級パティスリーで予約必須のスイーツを?」

「そ、そうだけど?」

 それがどうしたの?と言わんばかりに首を傾げるアリア。
 ロレッタは一瞬だけ絶妙な沈黙を置いたのち、腕を組んでじーっとアリアの顔を見つめる。

「ねえアリア、それってさぁ…」

「な、なに?」

 言葉を続けるのかと思いきや、ロレッタはニヤッと笑うと顔を逸らす。

「やっぱやーめた」

「え!?気になるところでやめないでよ!」

「言わな~い。だってそのほうが面白そうなんだもん」

 顔を赤くしてひどい!と抗議するアリアを横目に、ロレッタは一人確信していた。

(アリアは気づいてないだけで、宰相様にめちゃくちゃ甘やかされてるやつじゃないの)

「こういうのは後で答え合わせするのが楽しいのよ?」


 だから敢えて何も気づかせない。
 だってそのほうが、断然面白いに決まっているからだ。

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