ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
「クラヴィス家は名門ですが、王室と公爵家との距離感についてはどうお考えですかな?」

「……身分を忘れず、けれどその距離を恐れぬようにと教えられてきました」

 エレナが傍らのミカエル殿下を見上げると、殿下が微笑んで彼女の手を取る。

「公爵家の娘としてどちらにも誠実でありたいと思っています。そして民からの信頼に恥じぬよう努めること。それは王太子殿下も同じお考えであると信じておりますわ」

 どちらも事前に用意していた想定問答だった。
 でも、すべてエレナが自分の言葉で考えたものだからこそ、すごく自然で説得力がある。毅然とした何よりあの凛とした佇まい。

(完璧!完璧です、エレナ様…!!)

 場が一瞬静まり返ったあと、一人の老紳士が声を上げた。

「素晴らしい。クラヴィス嬢はすでに王太子妃となる器をお持ちのようだ」

 それに続いて、ひとり、またひとりと肯定の笑みを浮かべる貴族たち。
 
 エレナの傍らに立っていたミカエル殿下が何かを囁きかけると、照れたように頬を染め恥じらいを含んだ微笑みを浮かべる。

(うわ、うわ……今の!絶対さっきの受け答え褒めたよね!?ね!?)

 アリアは思わず胸元を押さえて、その場で感極まる勢いだった。

 しかし。
 その尊さに浸っていたアリアの目に、見覚えのない影が混じった。

 白と紺の礼装に身を包んだ青年が、人混みの向こうに立っている。
 年若く、整った中性的な顔立ち。一見すればこの場を楽しんでいる青年貴族に見えるが、アリアはその顔に見覚えがなかった。

(……え、誰だろうあの人…)

 その青年の視線の先を追うと、エレナ嬢の姿を一身に見つめている。
 好意的なというよりも獲物を見つめるような鋭さ。

 アリアの背筋がぞわりと粟立つ。

(……え、やだ、もしかして初見殺しのパターン…!?)

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