ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 周囲に挨拶をしながらあくまで社交を装いつつ、それでも確実にエレナのいる方向へと近づいていく。

 (やっぱり……この人、狙って動いてる!)

 アリアもすぐに足を動かした。
 青年との動線がかぶらないようにしながら人々の間を縫っていく。

「すまない、シャンパンを一ついただけるかな?」

 その瞬間、声をかけられた。
 別の招待客。背の高い壮年の騎士団長と思われる男性だった。

「えっ、はいかしこまりました。どうぞ…」

 サロンの空気を損なわないためにも、無視することなどできない。
 そうしている間にも青年はエレナへと近づいていく。

(まずい……!)

 アリアは笑顔を保ちつつ、迅速にグラスを差し出して丁寧に礼をして下がる。

 そして再び視線を走らせたとき、あの青年はエレナの横を通り過ぎて会場の外へと出ていくところだった。エレナにもミカエル殿下にも声をかけた様子はなく、二人も特別な反応を見せていない。

(すれ違っただけ?……でも、)

 アリアはその場で一歩踏み出した。
 殿下の婚約者であるエレナを見つめていたあの目。彼をただの退場者として見逃すには、直感が危険信号を鳴らしていた。

(会場を出た後に何かするつもりかもしれない……ってことはまたフラグだ。ここで阻止しなきゃ、またあの未来になる……!)

 会場から静かに離れる青年を、アリアは気配を消すように静かに後を追った。


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