ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 そのとき、頭の奥にふっと差し込んできたのはひとつの記憶――エレナ様と殿下ではなく、あの蒼玉のように澄んだ瞳。

 ベッド越しに、距離を詰めてきた昨夜。
 頬に触れた熱のこもった指先。

 その温度がまだ肌に残っている気がして、アリアは無意識に手を添える。

 この世界に戻ってきた理由は明確だった。
 推しカプの未来を守るため。

 でももう一つ、心をざわつかせる何かが芽吹いていた。

(……もしかして一番変わったのって……私のほうだったりする……?)

 過去のループにはいなかったイレギュラーな存在。
 気づけば胸の奥に居座っているあの人が、確実に自分の心に変化をもたらしているような。

(あんなふうに見つめられて……あんなに距離が近くて……)

「ってダメダメダメ!私の使命は推しカプ最優先なんだから…!!」

 アリアはそう言い聞かせながら、アリアは両頬を両手でぺちぺち叩く。

(ほんとにもう……こういうのはやめてほしい……!!)

 じわじわと浮上する記憶になんとも言えない胸のざわめきと熱が顔を出す。
 それはいくらアリアが否定しても、消えることはなかった。


< 69 / 167 >

この作品をシェア

pagetop