ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
「しかしあのグレイヴナー宰相閣下だもんなぁ。俺だったら緊張で気絶してるわ」

「……いろんな意味で気絶寸前だったけど……」

「まぁそれは冗談としても、ちゃんと気をつけろよ? 何かあったら相談くらいはのってやるから」

 (えぇ!?あのユーリがそんなこと言うなんて…過去では『チビ』とか『いつ王宮を追い出されるか見ものだな』とか憎まれ口ばっかりだったのに…)

 何だか意外なところで味方が増えたような気がして、アリアは思わず微笑んだ。

「うん……ありがとうユーリ」

「随分と楽しそうだな」

 低く落ちついた声が、廊下の空気を一瞬で張り詰めさせた。

 アリアが反射的に振り返ると、執務室へと向かう廊下にセドリックが立っていた。
 腕を組み、蒼玉色の瞳が細めながらアリアとユーリを観察するようにまっすぐに見つめている。

(い、いつからそこに……!?)

「あのっ……これは、その、ほんの世間話というか……!」

「同僚との親しげな歓談は否定しない。が、勤務時間中に任務を忘れるようでは困るな」

 アリアがしどろもどろになって言い訳を重ねるのを、セドリックは含みのある目で見つめる。その表情には言いようのない圧を帯びていた。

「そろそろ定刻だが執務室に来るのか?それとも、まだ雑談をしていたいか?」

 絶妙な皮肉をいち早く察知したユーリは、「……はは」と引きつった笑みを浮かべて後ずさる。

「……あ、ちょっと急用思い出した。じゃあアリアまた今度な!」

「え、ユーリ!?」

 一瞬で背を向けて逃げるように去っていく同期に手を伸ばしかけるも、その肩にグッと重みがのしかかる。
 そろそろと振り返ると、セドリックの手でがっちりと抑えられていた。

「さて、今日も君の観察報告をしっかり聞かせてもらうとしようか?」

 耳元でささやかれるセドリックの声。
 それは昨日よりも一段低く、ぞくりとするほど甘さを帯びていた。


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