ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 すると、唐突にぽんと頭に手を置かれる。
 驚いて見上げると、セドリックが小さく笑っていた。

「……君が、深刻な顔をしなくてもいい」

 打って変わって、穏やかで柔らかな表情と声。

「硬貨の件も紋章の件も、全部俺が解決する。そういう役目だ」

 そのとき、アリアはハッとした。
 自分の中に抱えていた言いようのない不安や不吉な予感、それをすべて見抜かれていたことに気がついたから。

「だから君は、そうやって笑いながら飴でも食べていろ」

「…………っ!」

 そっと頭に置かれた手に、わずかに力が込められた。

 まっすぐに言葉を重ねたセドリックの表情は、いつになく優しい。不意を突かれたその温かさに、心臓がぎゅっとなるほど締めつけられる。

 軽い慰めでも気まぐれな気遣いでもなくて、心からアリアのことを守ろうとしてくれているような――どんな約束よりも頼もしくて、胸にじんと染み込んできて胸がいっぱいになった。

(私の役目は、殿下とエレナ様の未来を守ることで……)

 アリアはそっと目を伏せる。

 ――だけどその『守るべき未来』に、この人がいてくれるなら。

 きっと自分はもう少しだけ強くなれる。
 そんな気がした。


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