【香る物語】香りの檻
その夜、友だちと遅くまで出かけた帰り道、静かな家に近づくと、誰かの話し声が聞こえたーーお兄ちゃんだった。
その隣に、もう一人。見覚えのある横顔。
ーー蘭ちゃん。
思わず足を止め、なぜか物陰に身を隠した。
二人は何かを話していたが、はっきりとは聞き取れない。
いつもは三人一緒なのに、珍しい。
突然、蘭ちゃんが泣き出した。お兄ちゃんがその肩を強く抱きしめ、何かを伝えている。
その光景を見た瞬間、胸の奥を、鋭いツララで貫かれたような痛みが走る。世界が一気に凍りついた。
玄関の外灯の下、二人だけが、まるで舞台の上にいるようにスポットライトを浴びていた。私はそのすぐ近くにいるのに、どこか別の世界から見ているひとりの観客のようだ。
いつものように声をかければいいだけ。なのに、この静寂を破ればすべてが壊れてしまいそうで、声を出すこともできなかった。口から漏れる糸のような息や、激しくなる鼓動でさえも騒がしく感じる。
ただ注意深く息を潜めて、その光景を見つめるだけでいっぱい。
胸は痛く息苦しいのに、それでも二人から目をそらせなかった。
その隣に、もう一人。見覚えのある横顔。
ーー蘭ちゃん。
思わず足を止め、なぜか物陰に身を隠した。
二人は何かを話していたが、はっきりとは聞き取れない。
いつもは三人一緒なのに、珍しい。
突然、蘭ちゃんが泣き出した。お兄ちゃんがその肩を強く抱きしめ、何かを伝えている。
その光景を見た瞬間、胸の奥を、鋭いツララで貫かれたような痛みが走る。世界が一気に凍りついた。
玄関の外灯の下、二人だけが、まるで舞台の上にいるようにスポットライトを浴びていた。私はそのすぐ近くにいるのに、どこか別の世界から見ているひとりの観客のようだ。
いつものように声をかければいいだけ。なのに、この静寂を破ればすべてが壊れてしまいそうで、声を出すこともできなかった。口から漏れる糸のような息や、激しくなる鼓動でさえも騒がしく感じる。
ただ注意深く息を潜めて、その光景を見つめるだけでいっぱい。
胸は痛く息苦しいのに、それでも二人から目をそらせなかった。