【香る物語】香りの檻
翌日の放課後、親友の月音(かのん)と駅ビル内のカフェに寄った。店内は甘いバニラやチョコレートの香りで満たされて、私たちのような女子学生で埋まっていた。

いつも通り恋バナをした後、何気なく昨夜見たことをつぶやいた。

キャラメルフローズンドリンクのストローを口に入れたまま、しばらく月音が凍りつく。
やがて、月音の喉がゴクリと動いた。そして満面の笑みで言った。

「それってさ、好きなんじゃない?」

まさかの返答に言葉が詰まる。

えっ、何言ってんだろう月音は?
お兄ちゃんだよ?
家族なのにそんな感情なんて……

ふと蘭ちゃんと抱き合ってる姿が、鮮明に脳裏に浮かび上がる。再び胸の奥が鋭く痛む。

う、うそ⁉︎
わ、私……お兄ちゃんのこと?

「別にいいんじゃない? 穂乃香とずっと一緒にいるからわかってたもん、私は」

えっ、そ、そうだったの?
どうして何も言ってくれないのよ!

そんな思いとともに、ようやく腑に落ちた。いつの頃からか、お兄ちゃんたち三人が家にいると、イラついてモヤモヤしていた理由が。

……嫉妬してたから?
ーー蘭ちゃんに?

これまで気づかないふりをしていた想いを、認めざるを得なくなった。動揺を隠せず声が震える。

「で、でもだめだよ。そんなの絶対許されない……家族だから!」

ハァーっと呆れ顔でため息をついた月音が核心をついた。

「血がつながってないし、穂乃香は苗字も違うでしょうが!」

月音はそう言って、ふっと目元を和らげた。
その言葉が、心のどこか深い場所にスーッと落ちていった。
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