【香る物語】香りの檻
そうだ、私はお父さんの籍に入っていないし血縁関係がない。このことを知っているのは、家族と月音だけ。彼女はそれを『特別なこと』だとは思っていないようだった。

それにお父さんは選択権をくれたんだった。私が18歳になって、どうしたいか決めればいいと言って。養子になるか、ならないか……

でも、お兄ちゃんを好きだというこの想いを優先したら、どうなるの?
お父さんとお母さんは、どう思う?
きっと反対するんじゃないかな?
いくら血がつながっていなくても。
だって私たちは、家族なんだから。
もしかしたら、今までの平穏な暮らしを私のせいで壊してしまうかも?
お母さんの笑い声を消しちゃう?
お父さんに恩を仇で返すことになる?

どっちみち私がすべてを壊しちゃうんだ。
ダメだよ。
離れないと、お兄ちゃんから。
忘れないと、この想いを。

月音の言葉に何も答えられず、残り少ないアールグレイのフローズンドリンクを、一気に飲み切る。さりげなく話題を変えて二人でカフェを後にした。

あれほど甘かったはずなのに、私の口の中には、何とも言えぬ苦味が広がっていく。

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