【香る物語】香りの檻

穂乃香(ベルガモット)〜闇と光〜

*香りノート:ベルガモット*悪夢を呼び起こす記憶の残り香をそっと打ち消し、安心へと導くーーベルガモットの光。
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入社して、すでに8か月が過ぎた。
新しい環境……配属されたくなかった第一研究開発部主任秘書補佐の仕事にも少しずつ慣れて、淡々とやるべき業務をこなす毎日。相変わらず勤務中は、お互いにビジネスライクで接している。そのほうが私としてもありがたい。余計な感情を無にできるから。

ただお兄ちゃんの下で働くだけでも気が重いのに、ここ芳香堂の第二、第三研究開発部では、お兄ちゃんの幼馴染の零司くんと蘭ちゃんも主任を務めているのだ。

この三人は、会社でも一緒に過ごすことが多い。特にお昼休み。せっかく息抜きできると思ってるところに、蘭ちゃんが声をかけてくる。きっと気を遣ってのことだろう。

ーーほんっと、いい迷惑だ。

何かにつけてサラッと断り、ひとりの時間を確保する。お兄ちゃんと一緒に働くだけでも、もう限度いっぱいなのに、お昼休みまであの三人と同じ空間にいるのは耐えられない。だって自分がもっと嫌な人間になっていくようで。

どうしても、あの夜の二人の抱擁を見て以来、蘭ちゃんの声を聞くたび、姿が目に入るたび、そして彼女が好む上品な薔薇のような香りが鼻をかすめるたびに、黒い感情が頭を持ち上げてしまう。

でも蘭ちゃんは何も悪くない。今でも変わらず、私にやさしくしてくれている。

親友の月音に言わせれば、『これが嫉妬する恋心』だそうだ。

はぁ……こんな気持ち、いつまで続くんだろう。やっぱり早く新しい仕事とお部屋、見つけなきゃ。
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