【香る物語】香りの檻
バッグの中から手に取る、シャンパンゴールドの小瓶。誕生日にお兄ちゃんからもらったロールボトル。
それを両手首に転がし、軽く擦り合わせてみると、甘い花の香りに混じって、ほのかにりんごとアールグレイのような上品な匂いがした。
確かローマンカモミールと金木犀と、あと何かのミックスって教えてもらったっけ。
鼻に近づけ何度も深く吸い込む。
心を落ち着けるために。
けれど香りはやさしく、胸が少し温かくなるのに、逆に胃がとても冷たく感じられ、漠然とした不安が広がっていく。
ーーなんだろう、この感じ。
久しぶりに、嫌な予感がする。
お正月休みが終わり、今年初めての出社。朝から、お父さんに一緒に車で行こうと誘われるイレギュラーから始まった。もちろん、他の社員に見られたくないのを理由に断る。
ほんっと、余計なことしないでよね、朝一で。
後になって思えば、あんなことを思ったからバチが当たったのかもしれない。
それはお昼休みにかかってきた一本の電話から始まる。
あれ、伯父さん?
久しぶりに話す伯父さんの声はどこか暗く、胸騒ぎがした。
「実はな、昨日電話がかかってきたんだよ。
穂乃香に会わせろって、あのろくでなしから……」
一瞬耳を疑った。だってもう20年弱だよ、最後に会ってからーーと言っても私はヤツの顔すら覚えていないのに、なんで今さら?
お母さん……には言えないよ。せっかく笑っているのに。
伯父さんには両親にこの件を黙っているようにお願いした。お母さんがつかんだ幸せを壊したくないから。
伯父さんは私に念を押して電話を切った。大至急弁護士の伊集院圭介先生に連絡するようにと。そして決して無茶をするなと。
それを両手首に転がし、軽く擦り合わせてみると、甘い花の香りに混じって、ほのかにりんごとアールグレイのような上品な匂いがした。
確かローマンカモミールと金木犀と、あと何かのミックスって教えてもらったっけ。
鼻に近づけ何度も深く吸い込む。
心を落ち着けるために。
けれど香りはやさしく、胸が少し温かくなるのに、逆に胃がとても冷たく感じられ、漠然とした不安が広がっていく。
ーーなんだろう、この感じ。
久しぶりに、嫌な予感がする。
お正月休みが終わり、今年初めての出社。朝から、お父さんに一緒に車で行こうと誘われるイレギュラーから始まった。もちろん、他の社員に見られたくないのを理由に断る。
ほんっと、余計なことしないでよね、朝一で。
後になって思えば、あんなことを思ったからバチが当たったのかもしれない。
それはお昼休みにかかってきた一本の電話から始まる。
あれ、伯父さん?
久しぶりに話す伯父さんの声はどこか暗く、胸騒ぎがした。
「実はな、昨日電話がかかってきたんだよ。
穂乃香に会わせろって、あのろくでなしから……」
一瞬耳を疑った。だってもう20年弱だよ、最後に会ってからーーと言っても私はヤツの顔すら覚えていないのに、なんで今さら?
お母さん……には言えないよ。せっかく笑っているのに。
伯父さんには両親にこの件を黙っているようにお願いした。お母さんがつかんだ幸せを壊したくないから。
伯父さんは私に念を押して電話を切った。大至急弁護士の伊集院圭介先生に連絡するようにと。そして決して無茶をするなと。