【香る物語】香りの檻
店員さんがドアを開けるたびに聞こえる階下のざわめき。それとともに入り込む炭火の煙とタレの焦げる匂い、それに酒とタバコが混ざった空気。思わず息を止める。
テーブルには空のお皿が数枚。タレが残る皿には無造作に積まれた串の数々。店員さんたちが空いたグラスとお皿を片付けてくれた。
私の前に置かれた生ビールを入れるような取っ手つきのグラス。氷がぎっしり詰まっていて、レモンの輪切りが一枚、ゆらゆらと浮かんでいる。外側には水滴が付いていて、見るからに冷たそう。
「えっ、これ……けっこう大きい」
思わずつぶやくと、先輩が笑って言った。
「アルコール弱めにしてもらったから。でも無理しないで。飲めなかったら私にちょうだいね」
やさしい先輩に勧められたレモンサワーを一口含む。炭酸の小さな泡が口の中で踊り出し、レモンの酸味が喉を通り過ぎる。苦味が残り、甘くはない。思っていたより飲みやすいが、少し胸の奥がカッと温かくなる。アルコールが鼻から抜ける感じがして、臭いが全身にまとわりつく。
なんだかレモンサワーが黒い感情を洗い流してくれるみたいだけど、やっぱりアルコールは好きじゃない……飲みたくないな、これ。
でも先輩に迷惑かけたくないよ。
テーブルには空のお皿が数枚。タレが残る皿には無造作に積まれた串の数々。店員さんたちが空いたグラスとお皿を片付けてくれた。
私の前に置かれた生ビールを入れるような取っ手つきのグラス。氷がぎっしり詰まっていて、レモンの輪切りが一枚、ゆらゆらと浮かんでいる。外側には水滴が付いていて、見るからに冷たそう。
「えっ、これ……けっこう大きい」
思わずつぶやくと、先輩が笑って言った。
「アルコール弱めにしてもらったから。でも無理しないで。飲めなかったら私にちょうだいね」
やさしい先輩に勧められたレモンサワーを一口含む。炭酸の小さな泡が口の中で踊り出し、レモンの酸味が喉を通り過ぎる。苦味が残り、甘くはない。思っていたより飲みやすいが、少し胸の奥がカッと温かくなる。アルコールが鼻から抜ける感じがして、臭いが全身にまとわりつく。
なんだかレモンサワーが黒い感情を洗い流してくれるみたいだけど、やっぱりアルコールは好きじゃない……飲みたくないな、これ。
でも先輩に迷惑かけたくないよ。