【香る物語】香りの檻
誰にも知られないように、小さなため息をつく。一気に飲んで終わりにしてしまおうーーそう覚悟を決め、ジョッキを口元へ運ぼうとした、その瞬間。
どこからともなく伸びた手に、ジョッキを取り上げられた。
びっくりして手の先を目でたどると、少し顔を赤らめたお兄ちゃんがいた。
「森崎。おまえ、飲めないんだろう」
それを聞いていた男性の先輩が、ケラケラ笑いながら口を挟む。
「主任、あまり森崎ちゃんを甘やかさないでくださいよ。彼女、いつもウーロン茶なんですよ。社会人なのに」
笑いながらうんうんとうなずくもう一人の先輩。そんな二人に、お兄ちゃんの冷たい声と刺すような視線が向けられた。
「お祝いの席だからといって、無理やり飲ませるのは違う。もし彼女が病院に運ばれることになったら、おまえたちは責任を取れるのか?」
お兄ちゃんの低い声に、個室の空気が一瞬で張りつめた。グラスを持っていた女性の先輩たちの手が止まり、男性の先輩たちの笑い声も途切れる。
ピリッとした沈黙。重い空気の中で、誰も次の言葉を探せない。
そんな中、零司くんが小さく息を吐き、場を和ませるように言った。
「おいおい律己。今日はめでたい日なんだから。君たちも気をつけろよ? こんなこと会社にバレたら、ハラスメントでコンプラ行きになっちゃうぞ」
彼の軽い口調に、周囲からぎこちない笑いが漏れる。けれど、それもすぐに途切れた。
どこからともなく伸びた手に、ジョッキを取り上げられた。
びっくりして手の先を目でたどると、少し顔を赤らめたお兄ちゃんがいた。
「森崎。おまえ、飲めないんだろう」
それを聞いていた男性の先輩が、ケラケラ笑いながら口を挟む。
「主任、あまり森崎ちゃんを甘やかさないでくださいよ。彼女、いつもウーロン茶なんですよ。社会人なのに」
笑いながらうんうんとうなずくもう一人の先輩。そんな二人に、お兄ちゃんの冷たい声と刺すような視線が向けられた。
「お祝いの席だからといって、無理やり飲ませるのは違う。もし彼女が病院に運ばれることになったら、おまえたちは責任を取れるのか?」
お兄ちゃんの低い声に、個室の空気が一瞬で張りつめた。グラスを持っていた女性の先輩たちの手が止まり、男性の先輩たちの笑い声も途切れる。
ピリッとした沈黙。重い空気の中で、誰も次の言葉を探せない。
そんな中、零司くんが小さく息を吐き、場を和ませるように言った。
「おいおい律己。今日はめでたい日なんだから。君たちも気をつけろよ? こんなこと会社にバレたら、ハラスメントでコンプラ行きになっちゃうぞ」
彼の軽い口調に、周囲からぎこちない笑いが漏れる。けれど、それもすぐに途切れた。