【香る物語】香りの檻
お兄ちゃんは何も言わず、手に持っていたジョッキを一気にあおった。レモンサワーを流し込む彼の喉元から、目が離せない。
ゴクリ、と鳴った音に合わせて、私の胸の奥がうずいた。理性も、自分との約束も、すべてが氷のように少しずつ溶けていく。まるで、呪文にかかったように。
人が飲む動作って、こんなにも色気があるものなの?
空になったジョッキがテーブルに置かれる。
カラン、と氷が鳴った。乾いた音が、静まり返った空間に響いた。
誰もが息をのんだ。私はただ、さっきの『絵』が忘れられず、ドクンドクンと鳴る自分の心臓の音だけを聞いていた。
「ほら、律己も飲んだし、これでチャラにしよっ!」
蘭ちゃんの明るい声が、張りつめた空気をやわらげる。場の空気がゆるみ、誰かが小さく笑った。
「ね、今日はみんなのお祝いなんだから。楽しく飲もう、ね?」
彼女の軽やかな声に救われるように、再びグラスがカチンと鳴る。
自分の胸の奥が熱いことに気づく。これはアルコールのせいではない。お兄ちゃんの『男』の色気を目の当たりにしたからだ。
なんでだろう。
離れた席なのに、お兄ちゃんのいつもの香りがする気がする。でもそれは病院の清潔な香りではなく、ほのかに漂うアールグレイのほうが強い。
体がゾクリとし、ほてった頬を冷ますように、水を飲み干した。
ゴクリ、と鳴った音に合わせて、私の胸の奥がうずいた。理性も、自分との約束も、すべてが氷のように少しずつ溶けていく。まるで、呪文にかかったように。
人が飲む動作って、こんなにも色気があるものなの?
空になったジョッキがテーブルに置かれる。
カラン、と氷が鳴った。乾いた音が、静まり返った空間に響いた。
誰もが息をのんだ。私はただ、さっきの『絵』が忘れられず、ドクンドクンと鳴る自分の心臓の音だけを聞いていた。
「ほら、律己も飲んだし、これでチャラにしよっ!」
蘭ちゃんの明るい声が、張りつめた空気をやわらげる。場の空気がゆるみ、誰かが小さく笑った。
「ね、今日はみんなのお祝いなんだから。楽しく飲もう、ね?」
彼女の軽やかな声に救われるように、再びグラスがカチンと鳴る。
自分の胸の奥が熱いことに気づく。これはアルコールのせいではない。お兄ちゃんの『男』の色気を目の当たりにしたからだ。
なんでだろう。
離れた席なのに、お兄ちゃんのいつもの香りがする気がする。でもそれは病院の清潔な香りではなく、ほのかに漂うアールグレイのほうが強い。
体がゾクリとし、ほてった頬を冷ますように、水を飲み干した。