【香る物語】香りの檻
そして今。
穂乃香が入社して、早くも1年が経とうとしている。
意識が徐々に、半REM領域から覚醒側へ戻り始めた。
確か昨日、蘭に絡まれたんだよな。あいつと零司は『律己と穂乃香ちゃんがうまくいくまで結婚しない』なんて、馬鹿げたことを言っていた。
しかし、酔った蘭の本音も聞こえた。
「ねぇ〜律己ぃ。もう結婚しちゃおうよ〜、ね?」
そんなこと言われても、すぐに穂乃香と結婚なんて、できるわけがない。蘭は零司と今すぐにでも一緒になりたいのだろう。俺のことなど気にせずそうすればいいのに。
律儀な蘭らしい。
ふと笑みが漏れた。そんな回想をしていたが、途中から記憶が曖昧だ。きっと零司が俺と蘭を送ってくれたのだろう。
もう一度ぐっと伸びをして寝返りをうった。その瞬間、周囲の空気がわずかに揺れた。シーツから、かすかな残り香が鼻腔へ流入する。呼吸のリズムがわずかに乱れた。
混ざり合うように漂うーー
ヒノキ、ローズマリー、白檀、ラベンダー、そしてベルガモット。
どれも馴染みのある香りのはずなのに、今朝の空気は少し違う。ラストノートに、ローマンカモミールと金木犀の淡く優しい残り香が隠れている。
……これは、俺の香りじゃない。
確認のためにシーツへ鼻を近づけた。勘違いではなかった。
鼓動が跳ね上がる。否定すればするほど、胸の振動だけが際立つ。
あれは……
単に心地よい甘い夢だと思っていたのに。
思考より先に、身体が反応する。
耳の奥に残る彼女の吐息。
指先が覚えている、滑らかな肌と体温。
舌で感じた甘さ。
全身が一瞬で発火したように熱くなる。
俺は穂乃香を……?
穂乃香が入社して、早くも1年が経とうとしている。
意識が徐々に、半REM領域から覚醒側へ戻り始めた。
確か昨日、蘭に絡まれたんだよな。あいつと零司は『律己と穂乃香ちゃんがうまくいくまで結婚しない』なんて、馬鹿げたことを言っていた。
しかし、酔った蘭の本音も聞こえた。
「ねぇ〜律己ぃ。もう結婚しちゃおうよ〜、ね?」
そんなこと言われても、すぐに穂乃香と結婚なんて、できるわけがない。蘭は零司と今すぐにでも一緒になりたいのだろう。俺のことなど気にせずそうすればいいのに。
律儀な蘭らしい。
ふと笑みが漏れた。そんな回想をしていたが、途中から記憶が曖昧だ。きっと零司が俺と蘭を送ってくれたのだろう。
もう一度ぐっと伸びをして寝返りをうった。その瞬間、周囲の空気がわずかに揺れた。シーツから、かすかな残り香が鼻腔へ流入する。呼吸のリズムがわずかに乱れた。
混ざり合うように漂うーー
ヒノキ、ローズマリー、白檀、ラベンダー、そしてベルガモット。
どれも馴染みのある香りのはずなのに、今朝の空気は少し違う。ラストノートに、ローマンカモミールと金木犀の淡く優しい残り香が隠れている。
……これは、俺の香りじゃない。
確認のためにシーツへ鼻を近づけた。勘違いではなかった。
鼓動が跳ね上がる。否定すればするほど、胸の振動だけが際立つ。
あれは……
単に心地よい甘い夢だと思っていたのに。
思考より先に、身体が反応する。
耳の奥に残る彼女の吐息。
指先が覚えている、滑らかな肌と体温。
舌で感じた甘さ。
全身が一瞬で発火したように熱くなる。
俺は穂乃香を……?