【香る物語】香りの檻
検査スティックを持ちながら、天井の一点を見つめることしかできずにいた。頭の中が真っ白で、次に何をすればいいのかすら浮かばない。
駅ビルを出ると、春の夜風が冷たく頬をかすめた。そのまま家へと向かう。
肌寒さのせいか、頭を覆っていた白いモヤは残ったままだけれど、その向こう側の『現実』がうっすら見えてきた。再び自分が立っている『今』という世界に戻り、ゆっくりと思考回路が動き出す。
と、とりあえず病院行かないと。誰かに見られたら困るから、ここからちょっと遠いところにしよう。そしてハッキリさせよう。絶対ただの生理不順だって。
『これは間違い』と頭の中で繰り返す。
自分に暗示をかけるように。
あと、新しい仕事と部屋も。
とにかくみんなにバレないようにしないと。
--すべてを。
静かに玄関を開けて、音を立てないように、まっすぐ自分の部屋へ向かう。両親が旅行中でよかった。だって、会わせる顔がないもん。
ベッドに座り、携帯で産婦人科を探し始めるが、あまりの多さに驚く。
条件を絞ったほうがいいかも?
思いつく条件を加えて、再検索した。その中で一番合いそうなクリニックをネットで予約でき、運良く明日の昼休みにささっと行けることになった。
口からフーッと長い息がこぼれた。とにかく、検査スティックの結果が間違いだったという確信が欲しい。新しい仕事と部屋探しもあるから、余計な心配事は早めに頭の隅から削除したいのが本音。
「だ、大丈夫。生理が遅れることはよくあるし。きっと色々ありすぎてそうなっただけ……」
自分自身に言い聞かせるように囁く。
しかし、このときはあまり深く考えていなかった--ううん、考えないようにしていた……
これから起こる体調の変化が、否応なく私に『現実』を突きつけてくることを。
駅ビルを出ると、春の夜風が冷たく頬をかすめた。そのまま家へと向かう。
肌寒さのせいか、頭を覆っていた白いモヤは残ったままだけれど、その向こう側の『現実』がうっすら見えてきた。再び自分が立っている『今』という世界に戻り、ゆっくりと思考回路が動き出す。
と、とりあえず病院行かないと。誰かに見られたら困るから、ここからちょっと遠いところにしよう。そしてハッキリさせよう。絶対ただの生理不順だって。
『これは間違い』と頭の中で繰り返す。
自分に暗示をかけるように。
あと、新しい仕事と部屋も。
とにかくみんなにバレないようにしないと。
--すべてを。
静かに玄関を開けて、音を立てないように、まっすぐ自分の部屋へ向かう。両親が旅行中でよかった。だって、会わせる顔がないもん。
ベッドに座り、携帯で産婦人科を探し始めるが、あまりの多さに驚く。
条件を絞ったほうがいいかも?
思いつく条件を加えて、再検索した。その中で一番合いそうなクリニックをネットで予約でき、運良く明日の昼休みにささっと行けることになった。
口からフーッと長い息がこぼれた。とにかく、検査スティックの結果が間違いだったという確信が欲しい。新しい仕事と部屋探しもあるから、余計な心配事は早めに頭の隅から削除したいのが本音。
「だ、大丈夫。生理が遅れることはよくあるし。きっと色々ありすぎてそうなっただけ……」
自分自身に言い聞かせるように囁く。
しかし、このときはあまり深く考えていなかった--ううん、考えないようにしていた……
これから起こる体調の変化が、否応なく私に『現実』を突きつけてくることを。