【香る物語】香りの檻
けれど、風は嘘みたいに静まり返っていた。
ひら、ひら、ひら。
目の前では何事もなかったように、花びらがまた優雅に舞い始める。
スーッと現実に連れ戻された。眩しい光が一瞬でなくなる。まるで、私の居場所はこの暗闇の世界なのだと、思い出させられたみたいに。
視線を左に向けると、ドアの右隣にあるシルバープレートには、黒文字で『第一研究開発部 主任室・秘書室』と刻まれている。
ドアにはIDタッチパネルがある。辞令書と一緒に渡され、首から下げていたIDを右手でパネルにかざした。
『ピッ』という短い電子音。その直後、ロックが外れる『カチャ』という金属的な冷たい響きがやけに大きく聞こえた。
無機質なその音に、私の肩がわずかに震える。胸の奥が、静かに沈んでいく。この扉の向こうに進むしかないのだと、逃れられない現実を突きつけられるように。
覚悟を決め、少し震える手で取っ手を握る。大きくひとつ呼吸を整え、静かにドアを開けた。
ひら、ひら、ひら。
目の前では何事もなかったように、花びらがまた優雅に舞い始める。
スーッと現実に連れ戻された。眩しい光が一瞬でなくなる。まるで、私の居場所はこの暗闇の世界なのだと、思い出させられたみたいに。
視線を左に向けると、ドアの右隣にあるシルバープレートには、黒文字で『第一研究開発部 主任室・秘書室』と刻まれている。
ドアにはIDタッチパネルがある。辞令書と一緒に渡され、首から下げていたIDを右手でパネルにかざした。
『ピッ』という短い電子音。その直後、ロックが外れる『カチャ』という金属的な冷たい響きがやけに大きく聞こえた。
無機質なその音に、私の肩がわずかに震える。胸の奥が、静かに沈んでいく。この扉の向こうに進むしかないのだと、逃れられない現実を突きつけられるように。
覚悟を決め、少し震える手で取っ手を握る。大きくひとつ呼吸を整え、静かにドアを開けた。