【香る物語】香りの檻
もともと私、朝は紅茶派だった。とくにアールグレイの、あのやわらかな柑橘の香り。
でも今、このコーヒーの匂いはきつすぎる。
「あっ、いいです」
吐き気を堪え、『いらない』という意味で胸の前で小さく手を振った。拒否るつもりで。でも蘭ちゃんには、『いいです』という私の言葉がなぜか伝わらない。
どうしてこの人はいつも、いつも私の場所に土足で入ってきて、全部めちゃくちゃにして奪うようなことをするの?
今も私の意思を無視して。
先月の祝賀会だって勝手に決めて、私がやるはずだった仕事まで奪って!
それでもなお、カップを顔の前に差し出す彼女に、私の中で今までピンと張り詰めていた黒い感情の糸が、プツンと切れた。
「なぁに、遠慮しちゃって! いいから、いいから」
「……って、いらないって言ってるでしょう!」
思った以上の大声に蘭ちゃんの体がピクリと跳ね上がり、息をのむ。律己さんと零司くんの顔が一瞬こわばったのも、目の端に映った。
自分が出した大声に、ハッとする。
でも今、このコーヒーの匂いはきつすぎる。
「あっ、いいです」
吐き気を堪え、『いらない』という意味で胸の前で小さく手を振った。拒否るつもりで。でも蘭ちゃんには、『いいです』という私の言葉がなぜか伝わらない。
どうしてこの人はいつも、いつも私の場所に土足で入ってきて、全部めちゃくちゃにして奪うようなことをするの?
今も私の意思を無視して。
先月の祝賀会だって勝手に決めて、私がやるはずだった仕事まで奪って!
それでもなお、カップを顔の前に差し出す彼女に、私の中で今までピンと張り詰めていた黒い感情の糸が、プツンと切れた。
「なぁに、遠慮しちゃって! いいから、いいから」
「……って、いらないって言ってるでしょう!」
思った以上の大声に蘭ちゃんの体がピクリと跳ね上がり、息をのむ。律己さんと零司くんの顔が一瞬こわばったのも、目の端に映った。
自分が出した大声に、ハッとする。