【香る物語】香りの檻
机には紙カップが置いてある。席に着くと、ふわっとペパーミントの爽やかな香りが広がり、少しだけ心がゆるむ。

引き出しからコンビニの袋をガサッと取り出す。中には、おにぎりとシンプルないちごジャムパンが入っている。

このお茶にはパンのほうが合いそうだ。

いちごジャムパンを手に取り、ひと口かじる。甘くてほんのり酸っぱいいちごの味が口いっぱいに広がる。

どうやら胃のむかつきは収まったらしい。単に空腹が限界だっただけなのかもしれない。

カップに手を伸ばし、透明感のある琥珀色の液体を口に含む。清涼感の後にくるかすかな甘みと苦味。そして、飲むにつれて増してくる塩気……? 鼻が詰まり始め、喉の奥がじんと熱い。

音を立てないようにカップを戻す。暗いパソコンのスクリーンに映るのは、涙をこぼしている私の顔。

お兄ちゃんが……律己さんが気を遣ってくれて嬉しくて泣いているわけじゃない。

さっき、はっきりと思い知らされた。

ーーそうだ、私は『ただの妹』なんだ。

あの夜、彼の腕の中にいたのは私なのに、彼の心の中にいたのは蘭ちゃんだったんだもん。
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