【香る物語】香りの檻
クリニックの後、どうやって午後の業務をこなしたのかも覚えていない。

帰宅してすぐ部屋に戻る。ドアを開けると、カーテンの開いた窓から街灯のやわらかい黄色い光が差し込んでいる。思った以上に明るいはずなのに、どうしてだろう。部屋は妙に暗く、冷たく見えた。

朝と同じように、駅前のコンビニで食べ物と飲み物を買ってきた。まだ吐き気が残っていて、料理をする気にもなれない。しかし、いつまでもこんなことを続けられない。お金もかかるし。それに両親が帰ってきたら、怪しまれる。

カーテンは閉めたが、あえて電気はつけない。代わりに、ベッド脇のナイトスタンドにある小さなライトだけを灯す。

ベッドに座り、背中をヘッドボードにそっと預けた。バッグの中から、音を立てないようにクリニックのプリントを取り出す。

コソコソしているのは、罪悪感がある証拠だろう。

一体、何に対して?

プリントを並べて見つめる。ふと消毒液の匂いが鼻をかすめる気がした。何度読んでも、同じ結果だ。

もしかしたら、読み違えているかも?
きっと明かりが十分でないから。
ううん、そうじゃない……

私は確実に妊娠している。

どうしよう?
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