ここが乙女ゲームの世界でも好きにさせてもらいます!

「……わかったわ。でも本を勝手に持ち出したりして大丈夫かしら……」
「勝手に持ち出すのはわたくしです。エレノアお嬢様が咎められるようなことにはなりません」
そう言って、ジーナは満面の笑みを見せる。

エレノアは、ジーナが専属のメイドになった時のことを思い出した。
小さい頃からエレノア付きのメイドは日替わり状態で、しかもメイドにも雑に扱われていた。その状況を知り、怒りを覚えたらしいジーナは就いていた調理補佐や食材管理の仕事から、志願してエレノア専属のメイドになってくれたのだ。

(両親からは愛されなかったけれど、私は恵まれているわね……)
ジーナの覚悟に、エレノアは目頭がじんわりと熱くなる。

「……私は、ジーナが咎められるのも嫌よ」
「うまくやりますから大丈夫です。それでも見つかったら、その時はその時です」

ジーナは手にしていた袋から大きな布をとりだすと、手際よくそれに本を(くる)み、袋の中へと押し込んだ。
「これでよし、っと」
袋から少々はみ出ているが、ジーナは気にしていないようだ。

「さあエレノアお嬢様、急いで帰りましょう。いつものキャロットケーキはお屋敷に届けさせますから」
さすが、そのへんの配慮も抜かりない。
キャロットケーキは無くて大丈夫よ、と言いかけて、エレノアは思い直す。

「……キャロットケーキは四人分買って、ヘルマンとハンクと一緒に食べましょうか」

――この先なにが起きても、自分が大事にしているものは見誤りたくない。

「さっそく手配してきますね!」
嬉しそうに駆け出していくジーナの後ろ姿を見送りながら、エレノアはひとつ、決心したように息を吐き出した。

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