ここが乙女ゲームの世界でも好きにさせてもらいます!
「……エレノアお嬢様。この本はこっそり拝借して帰りましょう」
「なにを言ってるのジーナ、そんなこと――」
「これは。きっとわたくしたちが持っていたほうがいいものだと思うんです」
めずらしくエレノアの言葉を遮るように、ジーナは被せ気味に言った。
「この世界が『乙女ゲーム』なるものの世界だということは、手紙の差出人の他にはわたくしたちとヘルマンさんしか知らないこと、ですよね?」
「……多分、ね。少なくとも、私はあなたとヘルマンにしか話していないわ」
あとはレイズがエレノア以外にも話しているか、だが、届いた手紙の文面から考えてもその可能性は低そうに思える。
「なんらかの方法で封印されていたこの本をこのままここに置いていけば、誰かが偶然開いてさっきの絵を見てしまうかもしれません。自分たちのいる世界が乙女ゲームとやらの世界だと王都に知れ渡ったら、きっと大騒動になります」
ジーナの考えは一理あった。
この階に足を運ぶ者はおそらく、この国の歴史を研究している学者などだろう。そこに書かれている絵や文をバカげていると一蹴するより、目を輝かせて信憑性があるかを突き詰めそうな人間ばかりだ。
「それにこの本を持って帰れば、ヘルマンさんにも見てもらえますし」
「それは、そうだけど……」
確かに口頭で伝えるよりも、ヘルマンに実物を見せたほうが手っ取り早いのはそのとおりだ。
エレノアはしばし逡巡したあと、意を決してゆっくり頷いた。