ここが乙女ゲームの世界でも好きにさせてもらいます!

「……モブ?」
「また脇に書かれていますね。ええと『ここでいうモブとは、メインストーリーにはほぼ関わりのない主要キャラクター以外の人物のことです』だそうですけど……毎回こんな注釈をつけるなら、最初からわかりやすく書いてほしいですよね!」
「……でも注釈をつけられても、そもそもの話が理解できないわ」

エレノアは侯爵家に生まれ、多少の問題はあれど、二十年、何不自由なく暮らしてきた。
(はたから見ても、私は幸せそうに見えない、ということなのかしら……)

「子供のいたずらでしょうか……? 差出人の“レイズ”という者にもお心当たりはないのですよね?」
「……ないわね」

この手紙は、守衛が今朝方、十歳ぐらいの男の子から渡されたものだった。
「頼まれた」と話したその男の子の素性もわからず、もちろん差出人のところに書かれていた“レイズ”という名前にも、エレノアはまったく心当たりがない。

「最後に『この手紙を信用してもらうために、この先起こることを記しておきます』と書かれていますけど……」
「王太子様から婚約の話が舞い込むって……どう考えてもありえないことね」

この国、ヴァレンティル国の王太子であるクリストフ・ド・ヴァレンティルにはすでに婚約者候補と噂される令嬢がいる。
噂、とはいうものの俗にいう公然の秘密というやつで、エレノアがクリストフの婚約者になることは、万に一つもありえなかった。

――――はずだった。
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