魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
一足早く歩く、キョウの後ろについてオフィスビルへと入る。

「お帰りなさいませ、社長」

あの時はなかったはずなのに、今は一階に綺麗な受付が備わっているどころか、スーツ姿の女性が頭を下げる。

「ただいま」

私は目を丸くする。

だって。
今、目の前に居るキョウが携えている雰囲気は、魔界の某国を牛耳る魔王でもなければ。
バカみたいにエロい戯言を繰り返すお兄さんでもなく。

若社長、という言葉がぴったりのビジネスマンなのだから。

うっ、空気の色まで違って見えます。

こなれた仕草で受付の女性は、エレベータまで案内してくれた。

「土曜日なのに仕事?」

「ええ。まだまだ来客が途絶えませんから。
その代わり来週から二週間、たっぷりクリスマス休暇を頂きますので、ご安心を」

「その間は総務の田中君が受付に下りてくれるんだよね?」

「ええ、申し送りは完璧です」

「それは何より」

高校生の私から見ると、眩暈がしそうなほどのお仕事モードの会話が和やかに交わされている。

……ど、どうしちゃったの?
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