魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
っていうかね、猫が見てる、猫が。
今は猫だけど、人の形にもなるアレがじいいっとその青い瞳でこっちを見てるんですけどっ!

「ダメだって」

私は必死でセーラー服の中に入ってくるその手を食い止める。

「見られてる」

「え?見せてやればいいじゃん♪」

いいじゃん♪ってなんですか。
その、どこかのドラマから仕入れてきたような軽い言い回しは!!

私はキッと睨みつける。
もっとも、既に私の瞳に睨みつけるほどの力が入ってるかどうか自信はないけど。

「いーやーでーすっ」

ちゅっと、キョウが私の頬に音を立ててキスをする。

「大丈夫。
ユリアの身体はとっても綺麗だし、見られて減るものでもないし☆」

減ります、減ります。磨り減ります。
主に心と羞恥心と、その他色々あれやこれやがずんずんと磨り減ります。

「ダメっ。もう、これ以上いじめると泣くよ?」

私は仕方なく最終通告。
今を逃すと、キョウのペースにハマって反論すら出来なくなる。

ママとの約束だもんね。『二度とユリアを泣かせない』

キョウ的にはここの後にカッコをつけて(ベッドの中以外では)っていう注釈があるらしいけど、そこはまぁ、気にしない。

ぱっと、まるで強盗に銃を突きつけられたコンビニ店員の素早さでキョウが両手を上げた。
私は慌てて乱れかけた服を直す。


チッって、今までこっちをガン見していたそこの黒い生物が舌打ちしたように見えたのは……気のせい、だと思いたいのですが……。


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