魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「キョウ、抱いて」

こんなの、まるで、腹話術じゃない。

「お姫様のお望みどおりに」

……って、私が強請ったみたいになってない?

乱れた髪を、そっとキョウが直してくれる。
どうせすぐに乱れるのに。

その指先が、ひどく優しい。
樹木の蜜を集めて混ぜ合わせたようなブラウンの瞳が真っ直ぐ私を見ていてあまりにも恥ずかしいので、思わず瞳を閉じてしまう。

「駄目。ユリア。
俺を見て?」

囁く声は、散々留守番させられて淋しさの限界を訴える子供の声に良く似ていた。

……強請り上手なんだから、もう。

視線を絡み合わせたまま、ゆっくりと、身体が重なっていく。
ドキドキしている、なんて生易しいものじゃない。

もう、心臓なんてとっくに身体の外に溢れているような気がしていた。

身体の奥の深いところに、ゆっくりと彼が辿り着く。

「よく出来ました」

二重丸、なんて呟くような教師のテンションでそう言って、人をますます陥れる技だけは、本当に天才的だわ。

恥ずかしくて、私の意志なんて無関係にぎゅっと閉じて彼を包み込む私の身体に、彼は満足そうな笑みを浮かべる。

だから、いやなんだって。
こっちだけ翻弄されて、あなたがそんなに余裕なのが。
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