魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
綾香がやってきた教室は、当然吸血鬼の話で持ちきりだった。

私もテンションを高めて、その輪の中に入ってみる。

「ほら、見てー、この首♪」

にっこり笑って、くっきり二つの歯型が残っている首を皆に差し出して見せる綾香の精神は、耳のキスマークを必死に隠している私なんかには到底理解できないものだった。

「わぁー、で、どんな奴なの?吸血鬼って」

「それが!
貴族って感じなの。
金髪で、鼻筋通っててー、唇はうっとりするほど紅くってさ。
ハリウッドスターって言うよりも、ヨーロッパの王子様って感じなんだ☆
気品があるっていうのかなぁ」

うっとりするほどの紅ってどんな色なんだろう。
なんて、混乱しながらも私はその会話にうらやましそうな視線を作ってついていく。

「背はー、170くらい?
すれ違いざまに、ふわりと私に抱きついて」

皆して羨ましげにきゃぁきゃぁ言ってるけど、基本的にその時点で犯罪者だから、その男。
美形じゃなけりゃ、即座に警察に突き出すに値する行為なんじゃなくて?

「綺麗な首筋ですね、なぁんて甘い声で囁くのぉ!!」

う、よくわかんない褒め方。
それ、普通褒めるところじゃないって。
ものすっごーく、褒める場所がなくって、無理矢理探し出して褒めた、みたいな感じになってるけど。良いのかしら?

「その直後に、こう、かぷって感じで、噛み付かれちゃった。ウフ☆」

幸せそうな笑顔だなーって、私まで思わず笑顔が映りそうになっちゃった。
現実離れした話をしてるのに、何故か皆、笑顔になっちゃう。

綾香は、そのくらい幸せそうに語っていた。
そう、結婚式当日の花嫁のように。


眩しいほどの笑顔で。
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