「庭の千草」狂詩曲
聞いていて、胸が締めつけられた。

「先生、行かないでよ。わたしを置いて行かないで」

クレアは形振り(なりふり)かまわず、泣き叫んだ。

返事のない教授を呼び、クレアはスクッと立ち上がりヴァイオリンをケースから取り出した。

「クレア!?」

「先生に演奏を聴いてもらうの」

クレアは言いながら、急いでヴァイオリンの調弦を済ませたかと思うと、演奏を始めた。

クライスラー作曲、美しきロスマリンだった。

オーストリアの代表的なヴァイオリン曲で、クライスラーの「愛の喜び」「愛の悲しみ」と合わせ、「愛の3部作」と言われる。

ダフィット教授が好きだった曲らしい。

2分程度の短い小品だ。
軽快なメロディーとローズマリーの美しい花を思わせる表情豊かな曲調だ。

タイトルの「ロスマリン」はハーブの「ローズマリー」のことだそうだ。

花言葉は「追憶」や「思い出」、「変わらぬ愛」などを意味する。
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