「庭の千草」狂詩曲
「ヴァイオリン、機内持ち込みは可能ですよね」

「確認します」

グランドスタッフはヴァイオリンケースの3辺の長さを測った。

手慣れた動きだ。

「宗月氏が入院して、クレアさんもウィーンに来ているんだよな。家には誰か居るのか?」

「誰も居ませんよ。理久の所でお世話になるよう連絡しています」

「ああ、理久の家は隣だったな」

「ええ。安坂さん。機内で言えないので今、お願いしておきます。日本に戻ること、緒方には言わないでもらえますか」

「……何か不都合でも?」

「ええ、まあ。理由は言えませんけど、お願いします。言い忘れないうちに、すみません」

「あっ……ああ」

安坂は腑に落ちないのか、憮然としていた。

「郁には会わずに戻るのか?」

「ええ、そのつもりです。XCEON のメンバーにも会わずに戻ります。病み上がりの姿は見せたくないので」

「ん……何かあったか?」

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