「庭の千草」狂詩曲
本棚には教則本が初心者用から上級者用まで並べてある。

本棚の空間に、写真立てが幾つか置かれていた。

宗月とクレア、詩月と宗月とクレア、クレアと詩月の知らない60歳半ばくらいの男性が写った写真だった。

詩月はクレアと男性が写った写真を手に取った。

クレアは未だずいぶん若い。

2人の後ろの背景に、見覚えがあった。

「ウィーン、音大の教室……あっ! このヴァイオリン」

クレアが手にしているヴァイオリンは、見間違うはずがなかった。

「ガダニーニ……シレーナ」

写真立てを持つ手が震えた。

写真立てを裏返し、写真を取り出し、写真の裏を確かめた。

ーークレア21歳、ダフィット教授55歳 レッスン室にて

ダフィット教授は、55歳にしてはずいぶん老けているし、酷くやつれて見えた。

詩月は写真に写るダフィット教授をじっとみつめた。

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