「庭の千草」狂詩曲
「あはははっ」

ーーとんだ道化だ

詩月は周桜宗月と比較され、親子だから演奏が似ているだの、血は争えないと称賛され、散々に周桜Jr.だと踊らされてきた。

「周桜宗月は2人いらない。周桜Jr.ではない」

周桜Jr.と言われるたびに否定し、「周桜詩月だ」と豪語してきた。

なのにーー本当に周桜Jr.ではなかった

周桜宗月の空真似、コピーでしかなかったことを自嘲するしかなかった。

自分が何者なのか、さえ定かではないことが、不安でたまらなかった。

詩月はピアノの覆ったカバーを外し、ピアノを弾いた。

周桜宗月の十八番、ショパンを演奏しまくった。

時間が経つのも忘れ、ショパンを片っ端から演奏した。

ヴァイオリン教室の窓から西陽が射しこみ、部屋がオレンジ色に染まったが、詩月は演奏をやめなかった。

やめられなかった。

頭の中で宗月のショパンの演奏が鳴っていて、自分のショパンを演奏するのに必死だった。
< 134 / 359 >

この作品をシェア

pagetop