「庭の千草」狂詩曲
詩月は師匠の家でしていたように、食器を流し台に運んだ。

「いいのよ、気を遣わなくて」

「いえ、師匠の家でもやっていたから」

「そうなの。でも、長旅で疲れているでしょう。お風呂、沸かしてあるから入っていらっしゃい。ほら理久、湯加減を見てきなさい」

「はいはい」

詩月は1人っ子だ。

父親、宗月は演奏活動で年中、留守で家には殆ど居なかった。

母親、クレアはヴァイオリン教室をしていて夕食を一緒にとるのは、週に2度ほどだった。

詩月はクレアから「~しなさい」とか、「~やっておいて」とか数えるほどしか、言われたことがない。

理久と母親の会話が、自然でいいなと思った。

「体はどうなの? 入院は検査とペースメーカーのチェックのためだったかしら。大学の書類とか役所の手続き、検査が始まる前に済ませておきなさいね。休みでグウタラしている理久、遠慮なく使っていいわよ」

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