「庭の千草」狂詩曲
「……さあ、弾き始めた時は明るかった」

指がジンジンし、感覚がなかった。

「無茶をするな、また腱鞘炎になるぞ」

「腱鞘炎には、じゅうぶん懲りているよ」

「サンドイッチは食ったのか、あれだけでは腹もすいただろ。腹へった~」

理久は返事など、まともに聞いていないのかもしれないと、詩月は思う。

理久に急かされ岩舘家のダイニングへ入ると、和食が用意されていた。

久しぶりの和食は懐かしく優しい味で、凍えた詩月の心に沁みた。

「どうだ? 良いだろ、和食は」

理久は自分が作ったわけでないのに、自慢気に言った。

「美味しかったです。向こうでは調味料が日本とは微妙に違うので。和食が恋しかったので」

「そう、よかった」

詩月の口に合うと云うことは、塩分と糖分、水分を控え目にしているということだ。

詩月は祖母の詩子がわざわざ詩月用を分けて味つけしていることを申し訳ないと思った。

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