「庭の千草」狂詩曲
「リリィ、コンクールの仇討はしてきたから。ファイナルの自由曲は『懐かしい土地の思い出』を演奏した、リリィのヴァイオリンで」

詩月はリリィがそこに居るように、リリィの墓に語りかける。

「リリィ、守ってくれてありがとう」

消え入りそうな声で呟いて、胸の前で十字を切った。

理久は詩月に陽射しが当たらないよう、詩月の後ろに立ち、陽射しを遮っていた。

詩月はスクッと立ち上がり、理久の顔と首筋の汗をタオルで拭った。

肩にかけていたヴァイオリンケースからヴァイオリンを取り出し素早く調弦すると、サッと構えた。

赤みがかった茶色の光沢のある胴体、手入れの行き届いたヴァイオリンはラベルに「IHS」の文字が印刷されてある。

ストラディバリと並ぶヴァイオリンの名器「グルネリ」だ。

ダイナミックでパワフルな深みのある音色がチャイコフスキーの「懐かしい土地の思い出」を奏でる。
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