「庭の千草」狂詩曲

chapter 2ーー雨の歌

詩月と理久はリリィ宅を出て、車に乗りこんだ。

「良かったのか。あの小百合という孫娘に口止めしなくて」

理久は数十メートル車を走らせ、詩月に訊ねた。

「彼女は会ったことを言いふらすような真似はしない」

「ずいぶん、信用しているんだな」

「彼女、『XCEON とのコラボはクラシックの敷居を取っ払ってくれそうだ』と言ったんだ。それを聞いて、なるほどなと思ってコラボしたんだ」

「へぇ~」

「それに彼女。ヴァイオリンを習い始めた頃、一緒に習っていて、泣き虫だった頃を知っているんだ」

「リリィに見た目は違うけど、中身が似ているよな」

「考えたこともなかった……そうか、リリィに似ているのか」

理久は詩月がリリィ宅を訪ねる前より、表情が明るくなったなと、ホッと息をついた。

「周桜Jr.ではない。第1の詩月」、そんな言葉1つで、吹っ切った顔になるものなんだなと。
< 169 / 359 >

この作品をシェア

pagetop