「庭の千草」狂詩曲
「手続きも色々あるし、少し考えたいこともあって帰国したんだ」

「暫くいるの?」

「そうだな。検査入院もあるからな。帰国していることをあまり知られたくない。他言無用で頼む」

「了解」

「ウィーンに戻る時は連絡する」

詩月は遥に右手を差し出し握手した。

「もう、いいのか?」

「何かあれば連絡して。できることはするから」

「うん、ありがとう。じゃあね」

遥は詩月が理久を待たせているのを察して、急ぐふりをした。

2年半前の遥はもっと軽々しかったし、落ち着きがなかった。

詩月は僅か2年半余りで、ずいぶん大人びたと思ったし、落ち着いたと思った。

ゆっくりしていると、誰に出くわすかわからない。

しかも、学舎を出れば、外はうだるような暑さだ。

「詩月。車、入り口まで寄せるから此処で待ってろ」

理久はそう言うと、エントランスホールを出て駆け出した。
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