「庭の千草」狂詩曲
その隣で、彩月も涙ぐんでいた。

詩月は懸命に話す詩子の言葉を食い入るように聞いた。

「それに、妊娠しているクレアを連れて渡航できるギリギリの時期だったの。クレアはまだツワリも収まっていなかったわ」

「お母さん。続きは私が話すわ」

「そうね。出産の後は、彩月の方が詳しいわね」

「帰国して直ぐに、妊婦健診をして状態を調べて……出産まで念入りに計画を立てて、大学病院にも何度もお伺いを立てて。出産までも、出産直後も大変だったの。先ず生まれてきたことが、奇跡だった」

「小学校前までの記憶は、殆んど病院だった。それに僕は人目を忍んで泣いている母さんしか知らなかった」

「そう、クレアは泣いてばかりいたわ。あなたの心臓病は自分のせいだと自分を責めていた。でも、あなたは片言を話せるようになると、病室でクレアのヴァイオリンを鳴らして、クレアを慰めるようになったの。覚えているわよね」
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