「庭の千草」狂詩曲
「ええ。ダフィット、クレアが師事していたヴァイオリン科の教授」 

詩月には、教授と学生が、男女の関係だったーーそれがどういうことなのか、考えなくてもヤバいと解る。

ましてや、妊娠していたとなれば不味いだけでは済まない。

「ダフィットは末期の肺がんだったのよ。妊娠が解った時、ダフィットは亡くなった後だった」

詩子は静かに続けた。

「クレアはクレアを育ててくれたお婆さんを亡くして、間もなく教授も亡くして……更には腱鞘炎で演奏を続ければヴァイオリンを弾けなくなると。辛いことが重なって、クレアは自暴自棄になって……」

慎重に言葉を選び、考えながら話す。

「詩月、あなたはクレアにとって希望だったのよ。生きる希望だったの。それに宗月が相談してきたのは、お腹の中のあなたの状態をなるべく早く知る必要があると判断したの」

詩子は時々、言葉を詰まらせた。

感極まり、声が震える。
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