「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)
手術室前。

詩月のヴァイオリンの師匠ユリウスと、その妻マルグリットがソファーに座り、胸の前で手を組み祈っていた。

「父さんは?」

詩月は開口一番、訊ねた。

「諸々の処置や検査が終わって今、手術中だ。詳細はわからない。ハインツから宗月がエリザベートコンクール会場に向かう途中、事故に遭って重体だと……」

ユリウスの言葉はそれ以上、続かなかった。

ハインツは宗月のマネジャーで、宗月とは20年来の付き合いだ。

詩月は気を失いそうになるのを堪え、ソファーに座った。

「ファイナルが始まる1時間ほど前、ハインツから知らせを聞いた……。ユリウスとマルグリットは先に最終便の飛行機で行かせて、俺は残ってお前の演奏を見守ってーー」

詩月はエィリッヒが昨晩、詩月に淡々と語ったのを思い出す。

「詩月。……ファイナルの演奏は上手く弾けたか」





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