「庭の千草」狂詩曲
そう言ったのは、詩月自身だ。

失うモノは何もないはずだと思っていた。

喪失感に、じっとしていると気分が落ちこんでいく。

ーーコンクールなど関係なく自由気ままに思い切り演奏できたら、もっと巧くもっと情感たっぷりに情熱的に納得のいく演奏をしたのに

詩月は取り留めのない思いが浮かんで、他人の演奏などどうだっていいと思った。

「エィリッヒ。僕は僕自身の演奏をしたい。自由に演奏を楽しみたい。決められた枠のコンサートに支配されたくない」

詩月は自分の正直な気持ちを吐露した。

「それに……何より体力を考えると、自分のペースで活動したい」

受賞すれば受賞記念コンサート、ガラ・コンサートに始まり、国際ツアーなど、コンクール主催者の企画する受賞者たちのためのツアー、CD録音契約、コンサート出演。

さらには、世界中の著名なオーケストラやコンサートホールから出演依頼、ソロ・リサイタル。

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