「庭の千草」狂詩曲
自分が健康なぶん、体が弱い者のことは、なかなか理解できないものだと、改めて知らされガックリする。

医学生の理久は、詩月の心臓病がどういう状態で、どういう手術をし、手術予後にどういう症状が出るのか。

知識もあるし、心臓のしくみも把握している。

長年、詩月の体の弱さを間近で観てきた。

理久はまだまだだなと思う。

「日本の暑さはウィーンとは比べものにならないよ。サウナみたいだ。黙って座っていても体力消耗する」

「そんなに差があるのか、確かに去年より暑いけれど」

「僕も驚いている。迂闊に出歩けない」

詩月に言われるまでもなく、理久も玄関を出た途端、出かけたくなくなる暑さだ。

詩月の食欲も普段より、落ちている。

「君は食が細いとは聞いているけれど……もう少し食べないと」

時任は朝、病室に入って来るなりごぼす。

「車椅子はいつまで使えばいいのかな。足腰まで弱りそうだ」
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