「庭の千草」狂詩曲
「一昨日、ナースステーションの前で、ナースの近藤さんと、話していた。『街頭演奏を中学生からしている』と」

「よく観ているな。意味不明だった」

「街頭演奏の様子が表立って流出されているからね」

詩月は笑みを浮かべる。

「街頭演奏を薦めたのは僕の師匠だ。本番の演奏で緊張してミスをしないための対策だったし、聴き手を常に意識して演奏するための訓練が目的だ。街頭演奏を始めた頃は、演奏するのが恐くてガタガタ震えて、泣きながら演奏していた」

「自主的に街頭演奏を始めたのではないのか?」

「信じられないだろうけれど、中学生の頃の僕はできるだけ目立ちたくなかったし、周桜Jr.と言われるたび萎縮して、まともに演奏ができなかった。見かねた師匠が、自信を持たせるために荒療治で課した苦肉の策だったんだ」

「なるほど、思い切ったことを。よほど厳しい師匠だったんだな」

< 249 / 359 >

この作品をシェア

pagetop