「庭の千草」狂詩曲
第1楽章から第3楽章まで約30分、詩月は真摯に思うままに思い切り弾ききった。

バルコニーには日差しを避ける影もない。

日差しを(じか)に受けながらの演奏、詩月の体がぐらりと揺れた。

詩子は詩月の演奏が終わるのを待たずに、練習室に急いだ。

練習室の扉を開けた詩子の目に、脱力する詩月の姿が見えて、詩子は慌てて詩月の体を支えた。

「あなたは無茶をし過ぎるわ」

詩子は言いながら、詩月を支えて練習室に入り、詩月を床に座らせ、バルコニーに出た。

大きく息を吸い込み、塀の外に向かって叫んだ。

「あなたたち、詩月のメモに同意したのでしょう。今すぐ撤退して。約束は絶対に守って。いいわね」

詩子の大声が詩月の耳にはっきりと聞こえた。

力強い声に、詩子の怒りを感じた。

詩子は叫ぶだけ叫んで練習室に戻ると、詩月に声をかけた。


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