「庭の千草」狂詩曲
「取り敢えず乗れ。着くまで寝ていてもかまわん」

詩月は言われるまま後部座席に乗りこんだ。

ユリウスが車を発進させて、数十秒で寝息を立てた。

ずいぶん疲れているなと、いつもより丁寧に運転した。

空港から車で約30分。

レオポルトシュタット、 ドナウ川とプラター公園に挟まれたエリアにあるユリウス宅に着いた。

マルグリットが車のエンジン音を聞きつけ、玄関扉を開けて出迎えた。

「マルグリット。詩月が眠ってしまってね。機内で眠れなかったようだから。すまないが、車を車庫に入れてくれないか。詩月を部屋に寝かせる」

「承知したわ」

「ガダニーニと酸素吸入器、持って上がってくれ。スーツケースは、詩月を寝かせて取りにくる」

ユリウスは早口で言い詩月を抱き上げ、家の中に入った。

詩月は起きる気配がなく、ユリウスは詩月を1階の詩月の部屋のベッドに、そっと寝かせた。
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