「庭の千草」狂詩曲
詩月が「シレーナ」を弾いていることで、賛否両論されている。

それはビアンカも知っている。

詩月の演奏は曲が進むにつれて、熱くなっていく。

指盤の上で細く長い左手の指が、巧みに高速で動く。

右手の弓は上げたり下げたりが速すぎて、どう動かしているのかもわからない。

「夏の名残りの薔薇」はクレアの十八番だった……では、詩月は? 詩月の十八番も「夏の名残りの薔薇」なのだろうか。

ビアンカは到底ついていけないと観念し、曲調に合わせて自分のペースで演奏した。

詩月は何も言わない。

何も言わずに、ビアンカのピアノ演奏を受け入れた。

「久しぶりの演奏なのに、全く手加減なし。ぶっちぎりだな、おい」

「これが呪われた音とか言う奴らの気がしれねえ」

詩月は病室で詩子と彩月が話したことを思い出していた。

母がダフィットから譲り受けたヴァイオリンを今、自分が弾いている。
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